論文「日本の世論は死刑を支持しているのか」 筆者:T・S
2015年2月23日
 死刑廃止が世界の趨勢であるにも関わらず、日本は死刑制度が存置しています。その大きな理由として、日本政府は世論調査における国民の大多数が存置を支持していることをあげています。
 この論文は、佐藤舞・オックスフォード大学犯罪学研究センター研究員が、内閣府による死刑に関する世論調査を批判的分析するとともに、独自の3種類の調査を行ない、政府の調査ではつかみ切れない国民の死刑に対する意見を浮き彫りにしながら、死刑廃止問題と世論調査の関係性を論じています。
 佐藤氏は、政府の世論調査が死刑の犯罪抑止効果の有無や死刑制度に関する情報を国民に開示しないままで行われていることに疑問を呈します。そして、佐藤氏による独自の調査では、死刑存置賛成でも確固たる意見を持ってない人が多いこと、死刑に関する情報を与えられると死刑制度への支持が減少する変化が見られること、半数が自身の知識不足を認識していないこと、などが明らかになったとしています。さらに、50人によるグループ討議などで国民が熟考することによって、死刑への立場が入れ替わったり、対立した意見への共感が生まれるなど現象もみられたとしています。

 この論文は「法律時報」2015年2月号(日本評論社)に所収されています。