調書  
2010年5月24日
 刑事手続における「調書」は、大別して、@公判廷で行われた手続内容を記録する公判調書、証人尋問の結果を記録する証人尋問調書など、公判手続の経過・内容を公証するために、裁判所書記官によって作成されるものと、A捜査機関が捜査の結果などを記録するために作成する「供述調書」、「実況見分調書」などがあります。
これらのうち、一般的に「調書」と言ったときに想起されるのは、捜査機関の作成する「供述調書」と言ってよいでしょう。捜査官が被疑者や参考人を取り調べたときにその供述を録取した書面を指し、検察官による場合は「検面調書」(検察官面前調書の略称)、司法警察職員(警察官)による場合は「員面調書」(司法警察職員面前調書の略称)と呼ばれます。
密室の取調で、一方当事者である捜査機関が作成するこれらの供述調書に、真に被疑者や参考人の述べたとおりのことが記録されるのか、健全な常識で考えれば、誰しも疑問に感じるところだと思います。ところが、証人が公判廷で証言したことと、その人の捜査段階の検面調書に記載されている内容が相反したりすると、刑事訴訟法321条1項2号後段という規定により、極めて安易に調書が証拠採用されてしまうという運用が行われています。このようなことにより、わが国の刑事裁判は、公判廷の供述よりも供述調書の記載によってなされてしまっていると指摘され、「調書裁判」と批判されています。