自白  
2009年9月21日
 犯罪事実の主要な部分について、自分の行為であることを認める供述をいいます。歴史的には、「自白は、証拠の王」という時代がありました。「本人が認めているのだから間違いない」ということからだったといってよいでしょう。そのため、自白を獲得するために拷問まで認められることになっていました。しかし、そのように獲得された自白には、虚偽が含まれていることが多いということが明らかになってきただけでなく、拷問の人権侵害性も問題になり、拷問が禁止されることになっただけでなく、自白の証拠としての利用も制約されることになりました。
日本国憲法は、拷問を「絶対に」禁じている(36条)のはもちろん、自白を証拠として利用することにも制限しています。まず、そもそも、証拠として使えるかどうかということでは、「強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない」と規定しています(38条2項)。すなわち、このような場合には、専門的には、「証拠能力」がないということになります。憲法が規定するような場合には、「任意性」がないからだというのが一般的な理解です。ですから、刑事訴訟法は、憲法と同じ場合だけでなく、「任意にされたものでない疑のある自白」も、使えないことにして、そのことを明確に規定しています(319条1項)。さらに、証拠として使える場合であっても、「自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」(38条3項)として制限を加えており、刑事訴訟法も同様に規定しています(319条2項)。
このような制限にもかかわらず、相変わらず虚偽の自白による冤罪がなくなっていないというのが実態です。そのため、最大限、虚偽の自白が入り込むのを避けるためということで、世界的に考え出されてきたのが、取調べにあたっての弁護人の立会いや、取調べ全過程の録音・録画です。日本でも、ようやく録音・録画の導入が、現実的な課題として検討されることになっています。1日も早い実現が期待されます。