遡及処罰の禁止  
2010年4月26日
 日本国憲法39条は、「何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を、問はれない」と規定しています。行為を行った時には、刑罰の対象になっていなかったにもかかわらず、事後に法律によって刑罰の対象にされるということになれば、刑罰の対象は、無限に広がる可能性があり、国民の行動の自由が奪われることになりかねません。また、既に行われた個別の行動を対象にすることにもなりますから、恣意的な処罰ということになる危険性もあります。ということで、歴史的に形成されてきた重要な原則です。「事後法の禁止」、あるいは「刑罰不遡及の原則」ともいわれます。「法律なければ犯罪なし」、また「法律なければ刑罰なし」として標語化されている罪刑法定主義の内容でもあります。新たに処罰の対象にする場合だけでなく、重い刑罰に変更することも許されません。しかし、事後に刑が廃止された場合や、有効期間が定められた限時法による処罰の場合に、その有効期間内に行われた行為を有効期間を経過した後に処罰することは許されないという理解が一般的です。