勾留  
2010年3月15日
 勾留は、逮捕と並び、身体を拘束するために認められた強制処分です。刑罰の一種である「拘留」と区別するために、未決勾留と呼ぶこともあります。逮捕は基本的に公訴を提起される前の捜査の対象になっている被疑者を拘束するための強制処分ですが、勾留は、被疑者だけでなく公訴を提起された被告人も拘束することができます。憲法上、拘束への着手である「逮捕」とその後の逮捕に伴う短時間の拘束である「抑留」に引き続き、公訴提起の前後に関わらず拘束する方法として「拘禁」が規定されており、この「拘禁」が勾留にあたると理解されています(憲法34条)。
被疑者の勾留の要件は、被告人の勾留についての刑訴法60条1項(以下の条文は、特に明示されていない場合は、いずれも刑訴法の条文です)が準用され、被告人の勾留と同様ということになっています(207条1項)。具体的には、「罪を犯したことを疑う相当な理由」があり、「住居不定」、または「罪証隠滅」か「逃亡」の可能性のいずれかが認められる場合です。その他、勾留の決定にあたって、拘束される者に事件の内容を告げて意見を聴く勾留質問が必要であること(憲法34条前段、61条)や、請求があった場合に勾留の理由を公開の法廷で明らかにする勾留理由開示手続(憲法34条後段、82-86条)などの手続もほぼ同様に行われます。
しかし、被疑者の勾留と被告人の勾留は次の点で異なっています。そもそも、被告人の場合に勾留を決定できるのは、裁判所ですが、被疑者の場合には、検察官の請求により裁判官が決定します。また、被疑者の場合には、逮捕されている場合にのみ、引き続き勾留することが許されています(逮捕前置主義)。それは、事前にさらに長期間の拘束を必要としているかどうかを確認するためと理解されています。拘束期間は、被疑者の場合は10日間であり、延長は、原則として10日を超えることはできません(208条)。被告人の場合には、2ヶ月であり、継続が必要な場合に1ヶ月ごとに更新することができますが、更新は原則として1回に限られることになっています(60条2項)。さらに、被告人の勾留には、拘束を解くための保釈が認められています(88-94条)が、被疑者には、保釈制度がありません(207条2項但書)。それに、弁護人等との接見交通を制限できるとする規定もあります(39条3項)。もっともこの規定に対する批判は強く、制限は機能しにくくなってはいます。被疑者の場合の不服申立は、準抗告によります(429条1項4号)が、被告人の場合には、抗告によることになります(420条2項)。