現住建造物等放火罪  
2010年2月22日
 放火罪(刑法108〜113条・115条)は、火をつけて、建造物その他の物を焼いてこわす(「焼損する」)罪と定義されます。どのような状態に至れば「焼損」といえるかについては、争いがありますが、判例は、「独立燃焼説」という考え方を採用しています。例えば、新聞紙に火をつけて、それを媒介にして建物に放火する場合、建物自体が独立して燃焼できる状態に達したことをもって、「焼損」したと考えるのです。したがって、その状態に達すれば放火罪の既遂、達しない段階では放火罪の未遂となります。
放火罪は、不特定人の生命・身体・財産の安全保護を目的とする公共危険罪とされ、放火の客体が何かによって、公共の危険の程度も異なることになると考えられることから、放火罪は、3種類に分かれます。(1)人の住居に使用し又は人の現在する建造物・汽車・電車・艦船・鉱坑に対する現住建造物等放火(刑法108条)、(2)人の住居に使用せず、かつ、人の現在しない建造物等に対する非現住建造物等放火罪(刑法109条)、(3)建造物以外に対する非建造物等放火罪(刑法110条)です。
現住建造物等放火罪の客体は、人の住居に使用されているときは、人が現在することを必要としませんし、人が現在するときには、人の住居に使用されていることを必要としません。人が住居に使用し、かつ現在する場合を含むのは当然です。現住建造物等放火罪は、人の生命に重大な危険を及ぼす罪であるため、その法定刑としては、5年以上の懲役、無期懲役に加え、死刑も規定されています。