殺人罪  
2010年1月25日
 殺人罪については、刑法199条が「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」として規定しています。すなわち、故意に「人」の命を奪った場合を、殺人罪としています。ですから、専門的には、どのような場合に「人」にあたるかが議論されてきました。具体的には、「人」の始期と終期です。始期は、「胎児」と「人」の区別が問題になります。出産のどの時点から「人」になると考えるかですが、一般的には、胎児が母体から一部露出した場合には、「人」として保護すべきだと考えられています。終期は、従前通り心臓と呼吸の停止、瞳孔の散大の3つの徴候が確認できた場合に「死」と考えるのか(三徴候説)、脳死をもって「死」と考えるか(脳死説)が問題になっています。この点は、まだ議論が続いているといった方が良いと思います。
欧米諸国の刑法の多くは、殺人罪を計画的な殺人(謀殺)や毒殺、それに嬰児殺等に分けて規定していたりします。これに対して日本の殺人罪は、そのような区別はしていません。そのために、量定できる刑罰の幅が広く規定されており、それぞれの事情は、量刑に際して判断されることになっています。
故意に「人」の生命を奪うという犯罪は、一般にはこの殺人罪だけだと思われているかもしれませんが、刑法は、自殺を唆したり手伝ったり、被害者に依頼されたり(嘱託)、被害者の同意(承諾)の下で「人の生命」を奪った場合も、「殺人の罪」として処罰することにしています(自殺関与・同意殺人罪、202条)。
殺人罪については、「未遂」(203条)だけでなく、殺人を犯す目的で行った準備である「予備」(201条)も処罰することにしていますが、自殺関与・同意殺人罪については、「未遂」を処罰することにしています(203条)。