故意  
2010年1月18日
 刑法38条1項は「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」と定めていますが、この「罪を犯す意思」が故意です。故意がなければ原則として犯罪は成立しませんが、過失犯が法定されている場合は過失の有無が問題となります。例えば、ある行為によって人を死に至らせた場合、行為時に「人を殺す」という認識があれば殺人罪となりますが、その認識がなく傷害の故意のみが認められる場合は傷害致死罪、過失のみが認められる場合は過失犯(過失致死罪、業務上過失致死罪等)となります。
このように故意は犯罪の成否または罪名を決定し、量刑上も極めて重要な要素となりますが、その理由は、犯罪事実を認識しながらあえて犯行に及んだ点で責任が重く、社会的に強い非難に値すると考えられることにあります。
実際の裁判では、被告人が事実関係を認めつつ故意を否認するという場合がよくあります。例えば、「傷つける意思はあったが、殺すつもりはなかった」等々です。故意は主観的要素ですが、その認定は犯人の自白のみで認定されるわけではなく、証拠によって認められる客観的状況から認定されます。例えば、胸部を鋭利な刃物で深く刺していれば殺人の故意があったと通常は認められるでしょう。このように、犯人が犯罪行為の結果をもたらす可能性をどの程度認識していたと証拠上認定できるかが、故意の認定にとっては重要となります。