冤罪が生まれる背景を考える  
2013年2月18日
映画「日本の黒い夏 −冤罪− 」
 1994年に起こった松本サリン事件を素材にした映画です。地元の高校の放送部の生徒たちが事件とその報道を検証するものとなっています。
 松本サリン事件は、長野県松本市で毒ガスが発生し、その被害者であるにもかかわらずに事件の犯人であると疑われることになってしまった事件です。
 異常な事件発生に警察の捜査は難航しましたが、やがて毒ガスはサリンで、その人がサリンをつくることができると判断し始めました。なかなか犯人がつかまらない状況が続く中で、事件を追う報道機関にも焦りが出てきます。警察がその人を疑い始めたことを知った報道機関は警察の捜査の方向と異なる報道をすると報道機関への警察の協力を得られなくなる、テレビ報道が他局から遅れると視聴率が下がる、等々の理由からその人についての報道を始めてしまいました。証拠がないとして反対する報道関係者もいましたが、その意見は受け入れられませんでした。こうして報道機関が無実の人を犯人視する報道をしてしまった背景には、市民の中に“怪しい人”を警察が追及することを求める傾向もありました。
 不幸中の幸い、松本サリン事件で疑われてしまった人は、その後事件はカルト集団の犯行だとわかり、逮捕・起訴されることはありませんでした。しかし、いまなお市民の中には“怪しい人”の取り締まりを求める傾向は強く、その人の犯行に多少疑念があったとしても裁判では必罰・厳罰を求めがちです。そのような中で刑事裁判が行われるわけですから、この事件のようなこともあることを確認しておくことは、裁判員裁判をよりよくしていく上でも大事なことだと思われます。

 この映画などが「日本映画・テレビ編集協会」主催の【映画をつなぐ男たち 映画編集者の世界】(2/9-22)で上映されますので、ご案内します。
 映画「日本の黒い夏 −冤罪− 」が上映されるのは2月20日(水)17:10〜、2月22日(金)14:20〜です。