法テラスの果たしていること、法科大学院で学んだこと  
2012年5月14日
宮地洋平さん(弁護士・法テラス須崎法律事務所)

* 2012年3月25日のBS11の番組「司法改革10年」の中で高知県・法テラス須崎法律事務所の宮地洋平弁護士の発言も放映されました。以下は番組の放映に先立って東京経済大学・大出良知教授が宮地洋平弁護士にインタビューした内容に若干加筆したものです。

(大出教授)
 法テラス須崎法律事務所はいつできたのですか。いま2人の弁護士がいらっしゃいますが、いつから2人体制になったのですか。
(宮地弁護士)
 平成18年にでき、平成20年から2人体制になっています。
(大出教授)
 弁護士1人では依頼者への対応は困難だということで2人体制になったということでしょうか。須崎地域での司法アクセスの現状や法テラス須崎法律事務所が果たしている役割などについて感じていることをお聞かせください。
(宮地弁護士)
 この地域は民事事件も刑事事件も決して少ない地域ではありません。1人体制では法的サービスとしては不十分であり、2人体制にしたということです。
(大出教授)
 この地域ではどのような事件が多いのですか。また、依頼者が事務所にアクセスしてきた事件には対応されているのだと思いますが、埋もれてしまっている事件もあるのではないでしょうか。
(宮地弁護士)
 民事事件ですと、一番多いのは債務整理の事案です。経済的に困っている人が多いからですが、現在事件になっている案件以外にも地域の中に弁護士に対する需要がどれだけ埋もれているのかは、なかなか想像しづらいところがあります。
 ただ、債務整理の依頼者の中には、高齢であるとか、障害をお持ちだとか、基本的に社会と接する機会が少ない人もます。そうすると、たとえば法テラスで債務整理の仕事をしますと宣伝したとしても、なかなかその人たちには届かない、届いたとしても自分たちの足で法テラスの事務所まで来て、法律相談をしてみようという発想にはなかなかならない現状があると思います。実際にいま来ている依頼者も福祉関係者など地域でお世話になっている人に連れてきてもらっているケースが結構あります。ですから、須崎周辺の地域にもまだまだたくさんの人々が債務整理の問題などを抱えていて、それが埋もれてしまっていても決しておかしくないと思います。
(大出教授)
 刑事事件についてはどうでしょうか。
(宮地弁護士)
 刑事事件でいえば、私は片道3時間弱の警察署に出向き、被疑者との接見をしたりすることもあります。事件の報酬で事務所を経営しようと思ったら、そのようなことはやりたくてもなかなかできないかも知れません。法テラスの弁護士には、事務所経営のためには事件を選ばないといけないという制約はありませんので、人の役に立てる、人のためになるような仕事を率先してできます。ですから、民事も含めて、仕事への充実感を強く持つことができますし、実際にも、法テラスが地域の人々のお役にたてているのではないかと思っています。
(大出教授)
 宮地さんは法科大学院を修了して弁護士になりました。法科大学院での勉強はいまの実務にどのように役立っていますか。
(宮地弁護士)
 私は大学の商学部を卒業し、その後4年間金融機関で働き、法科大学院に入学したのはそれからでした。3年間の未修者コースを修了し、司法試験を受験し合格しました。
 私は金融機関の4年間が不満足だったわけではないのですが、そこで働いている最中に法科大学院制度ができることを知り、人の役に立つ、そして正義のためにたたかう、そのような弁護士に自分もなれる可能性があることを知り、受験しました。
 法科大学院の授業・カリキュラムは基本的に満足できるものでした。そこでは法律の基礎を学ばせてもらいました。弁護士の仕事は基礎を応用することが日常です。応用の知識や幅広い判例の知識をあらかじめ持っていなければ対応できない仕事ではありません。法科大学院で基礎を学べたことはよかったです。
 私は法科大学院の一期生でしたので、法科大学院の側もどのような授業・カリキュラムを提供するかは、おそらく試行錯誤だったと思いますし、実際に満足できる授業がある一方で、ものたりない授業や自分が思っていたのとは少し違った授業があったのも確かです。ただ、総じていえば、多くが実務の基礎となる、満足できる授業・カリキュラムでした。
(大出教授)
 法テラスの役割と仕事、法科大学院制度などについての率直なご意見を聞かせていただきました。ありがとうございました。