ビラまきがなぜ犯罪なのか −公務員への弾圧とたたかう  
2011年7月18日
堀越明男さん(国公法弾圧堀越事件の被告人)

―――地域で政党ビラを配布したら、それは国家公務員法違反とされ、堀越さんは2004年に逮捕・起訴されました。堀越さんは一審有罪、二審無罪を経て、現在最高裁で無罪を求めてたたかっておられます。この事件・裁判の経緯からも、司法の改革課題が浮かび上がってくると思います。
  まずは、堀越さんが逮捕・起訴される際の状況からお聞かせください。
(堀越さん)
  警視庁の公安部は私を逮捕する前年から私を尾行し、私の逮捕を狙っていました。そして、私のビラ配布は国家公務員の政治活動にあたるとして、国家公務員法違反を理由に逮捕したのです。
  私がビラを配ったのは勤務時間外でした。国家公務員法や人事院規則には公務員の政治的行為を制限する規定がありますが、勤務時間外の行為まで制限するのは国民の表現の自由などを保障している憲法に違反します。私は逮捕・勾留され、検察官から公務員の政治活動は罰せられるということ、それは猿払事件の最高裁判決によること、などを延々と説明されました。私は、勤務時間外の行為まで制限する国家公務員法の規定も合憲だという猿払判決は間違っていると思っていましたので、それを理由に私に刑事罰を科そうとする検察と全面的にたたかうことにしました。

―――堀越さんは起訴され、裁判が始まりました。無罪を訴える堀越さんの主張に対する裁判官たちの態度をどのように感じましたか。
(堀越さん)
  一審判決にあたった裁判長は、公判ではニコニコと明るい感じでしたが、判決をくだす時には暗い顔をしていました。勤務時間外のビラ配布を有罪とするのは忍びないが、最高裁の猿払判決がある以上、それには逆らえない、という心境だったのだろうと思われます。二審では検察側はあまり主張できず、弁護団が諸外国の例なども主張しながら論戦で圧倒し、裁判長は私を無罪とする判決を出しました。ところが、この裁判長も猿払判決の判断基準の枠組みには従うとしました。やはり裁判官は最高裁判決に真正面から異議を唱える判断はしづらいようです。

―――警察は堀越さんを尾行し、その行動を盗撮して逮捕に踏み切りました。そのやり方は常軌を逸していました。警察の行為に対する怒りの気持ちは強いのではないでしょうか。
(堀越さん)
  私に狙いをつけて逮捕にこぎつけたのは公安警察でした。公安警察の活動内容は外からはほとんどわかりません。公安警察というものがもっとガラス張りになるよう求めていく必要があります。

―――堀越さんの事件はいま、最高裁でたたかわれています。いまの思いをお聞かせください。
(堀越さん)
  公務員の政治的行為を全面的に禁止する国家公務員法と人事院規則の規定は明らかに憲法違反なのに、1974年、最高裁は猿払事件においてそれを合憲としました。法律は様々な解釈をされることになりますから、その法律ができた背景、その法律についての裁判所の判断の背景などを理解する努力をしないと、その法律に振り回されてしまうことになります。それは公務員の表現の自由の問題にもあてはまります。公務員自身がよく勉強し、考えていかないと、公務員の表現の自由もなかなか勝ち取れないでしょう。私の裁判にあたってもそのような努力が欠かせないと思います。私たち公務員は憲法99条によって憲法を尊重し擁護する義務を課せられています。そのことの意味を職場の内外に広げていくことも重要な課題です。

―――権力者に対してもの言わぬ公務員をつくろうという政府の政策の中で堀越さんも逮捕・起訴されたのだと思いますので、司法に課せられた責任は大きいはずです。
  本日はありがとうございました。

 

* 堀越明男さんを支えともにたたかう、「国公法弾圧を許さず言論表現の自由を守る会」のホームページのURLは下記です。
   http://www.geocities.jp/kokkou_horikoshi/