司法に国民の風を吹かせよう(1)  
2011年3月7日
清水鳩子さん(主婦連合会参与・「司法に国民の風を吹かせよう」実行委員会実行委員)

―――清水さんは「司法に国民の風を吹かせよう」という活動をなさっています。3月12日にはその第20回目の集会を開催されます。
  「司法に国民の風を吹かせよう」という活動は10年前に司法制度改革審議会が司法制度改革の議論をしていた頃からではないでしょうか。どのような問題意識から始めたのでしょうか。
(清水さん)
  司法制度改革審議会に主婦連合会(以下、主婦連)の吉岡初子が委員になりました。いわば消費者代表として司法制度改革の検討に参加することになりました。そこで私たちは消費者・国民の意見なども司法制度改革に反映させようと考え、消費者団体や各種裁判の原告団、法律家団体などと「司法に国民の風を吹かせよう」実行委員会(風の会)をつくったのです。

―――司法制度改革審議会での審議状況を清水さんたちはどのように考え、どのような活動をされたのでしょうか。
(清水さん)
  当時の司法制度改革の検討事項は専門的な課題も多かったのですが、私たちはいくつかの課題に関心を持つことになりました。
  一つは法曹人口を増やす課題でした。私たちは、消費者問題で悩みを抱えている人がたくさんいること、しかしそのための法律相談の体制があまりないこと、とくに弁護士がいない地域が多く残っていること、などから、弁護士を増やし、弁護士過疎地域をなくしていくべきだと考えました。私は、この問題については当時少なくない弁護士の方から反論を受けましたが、私たちは弁護士など法曹人口の拡大と弁護士偏在の解消を唱えてきました。
  司法制度改革審議会の意見書には弁護士報酬を敗訴者側に負担させるという提言も盛り込まれました。私たちは、それは大問題だと考えました。私たちは消費者の権利を守るために大企業や行政機関を提訴することも多くありましたが、敗訴の場合に相手側の弁護士報酬も私たちが負担するとなると、提訴自体を躊躇せざるを得なくなります。そこで私たちは、審議会の意見書が出された後にも、この敗訴者負担の制度の策定を阻止するたたかいを進めました。

「司法に国民の風を吹かせよう」実行委員会イベントチラシ
2011年3月12日(土)午後1時半〜、プラザF(東京・四谷)
講演「足利事件を検証する」泉沢章弁護士
講演「今の裁判、ちょっと変!」北澤貞男弁護士
イベントの連絡先:03-3352-9475

―――司法制度改革審議会では乱訴の恐れを防止することを目的に敗訴者負担制度の導入を提言したのだと思いますが、結局政府は制度づくりを断念しましたね。
(清水さん)
  私は怖いもの知らずなので、この問題で首相官邸に電話をしたんです。そうしたら、その後議員になった小野次郎秘書官が会ってくれることになりました。会ったら小野さんが「この法律は通らないですよ」と言うんです。「一番やりたくないのは法務省だから。法務省が嫌だっていう法律は通らない」と言ったんです。司法制度改革審議会意見書は敗訴者に相手方の弁護士報酬を負担させるべき裁判とそうしない裁判を仕分けるべきとの提言になっていたので、法務省としてはそんなことはできないと判断していたということです。

―――「司法に国民の風を吹かせよう」実行委員会(風の会)は映画「日独裁判官物語」の製作・上映の運動にも参加されましたよね。
(清水さん)
  当時北海道大学にいらっしゃった木佐茂男教授がドイツの司法と裁判官のことを紹介し、それが映画になったのです。「司法に国民の風を吹かせよう」実行委員会(風の会)も映画製作を支援し、また上映運動に参加しました。映画にドイツの裁判官の日常生活が描かれていましたが、彼ら・彼女らは普通にスクーターに乗って通勤し、また市民の権利を守ろうという集会やデモに参加しているのです。その姿にびっくりしました。
  日本の裁判官は黒塗りの車で送り迎えされます。ドイツの裁判官とは全然違います。私の娘が裁判官の娘さんと友人なんですが、日本の裁判官の家に行ける人は制限されているそうです。ドイツの裁判官は、裁判官である前に一市民であり、こんなにも日本と違っているということを多くの人に伝える取り組みをしました。
  「司法に国民の風を吹かせよう」実行委員会(風の会)はこれまで、法曹人口の問題、消費者問題など時々の重要問題や人々の関心事をテーマに集会を積み重ねてきました。私たちは集会の企画にあたっては当事者の話、現場の実情を聞くことを重視してきました。

<次号に続く>

 
【清水鳩子(しみずはとこ)さんのプロフィール】
主婦連合会の事務局長・会長などを経て、現在参与。
「司法に国民の風を吹かせよう」実行委員会実行委員。