傷害罪  
2010年2月1日
 刑法204条の傷害罪は、「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定します。ここでの「傷害」の定義が問題となりますが、一般的には、「人の身体の生理機能を害すること」とされています。被害者が「殴られて痛い思いをした」というだけでは傷害には当たりませんが、被害者に外傷が発生することまでは必要でなく、例えば失神させたという場合や、病気に感染させるというような場合も、傷害に当たります。
傷害罪については、刑法38条1項の、(法律に特別の規定のない限り、)「罪を犯す意思(故意)がない行為は、罰しない」という規定との関係が問題となります。
この規定と、刑法204条の規定の素直な解釈からは、「人の身体を傷害」することについての故意が必要であるということになりますが、通説・判例は、傷害罪を暴行罪(刑法208条)の「結果的加重犯」と解しています。結果的加重犯とは、基本的な犯罪(この場合、暴行罪)を犯した人が、意図することなく重い結果(この場合、傷害の結果)を発生させた場合には、重い結果についての責任を負うとされるものです。ですから、人を傷害するつもりはなく暴行を働き、その結果傷害の結果が発生すれば、傷害罪が成立するということになります。