論稿「私はこうして刑事弁護人になった」 筆者:T・S
2014年11月10日
 法科大学院の募集停止が相次き、その存在意義が問われていますが、法科大学院を経て、現在刑事弁護人として、3年目を迎えた若手弁護士の山本衛さんが、法曹をめざすきっかけから法科大学院での授業や刑事弁護のやりがいまでを語った「法学セミナー」2014年11月号の特集「刑事弁護入門」の論稿です。
 山本さんが刑事事件に興味を持つきっかけは、法科大学院の授業で、実際の刑事裁判例を検討すると、論理的に考えた結論や法律の適用の結論とは異なって、被告人に不利に働く判決の事例が多いことに気づかされ、自分が弁護人だったら、どう主張するか、考え議論した充実した授業からでした。
 「弁護士の仕事は他にもある。消費者、労働者、法律の手助けを必要としている弱い立場の人はたくさんいる。その中で、なぜ刑事事件を起した、あるいは疑いをかけられた被疑者・被告人を弁護するのだろう」との山本さんの問いに、刑法ゼミで指導を受けた弁護士は、答えました。
 「疑いをかけられたというだけで、社会全体がその人を敵とみなす。孤独なんです。被疑者被告人こそ、社会全体から敵とみなされた弱い立場の人なのです。弁護士の中にも、刑事事件を片手間にやるような人もいます。しかし、本当は、被疑者被告人こそ、弁護士による法律の手助けをもっとも必要としている人なのです」
 それ以来、山本さんは社会構造的な弱者を支える刑事弁護人をめざすようになりました。
 山本さんは、法科大学院での授業を、全科目にわたり、広く本質的な勉強ができ、実務を意識し触れることで、「自分がどんな法曹になりたいのかという方向性を見定めるこれ以上ない機会」として、自己の経験を紹介しています。

この論稿は、「法学セミナー」2014年11月号に所収。筆者は山本衛さん(弁護士)。