書籍『朝日訴訟から生存権裁判へ』(その1) 筆者:H・O
2014年6月30日
 
 生存権を問うた朝日訴訟は有名な裁判です。この裁判の経過をお振り返りながら、こんにちたたかわれている生存権裁判の展望が綴られた本です。朝日訴訟は司法の役割を学ぶ上でも有意義です。
 病で入院していた朝日茂さんが生活保護制度にもとづく保護水準や支給する日用品費の支給額があまりにも少ないことなどは不当だとして訴えた朝日訴訟。第一審は、生活保護に関わる国の責任と生存権の権利性を明確にし、朝日さんの勝訴となりました(1960年)。残念ながら、この判決は二審で覆され、朝日さんの死亡によって裁判は終結となりましたが、第一審判決の意義は高く評価されています。第一審判決の翌年(1961年)、政府は生活保護基準を16%、日用品費を47%引き上げました。司法が政治・社会を動かしたのです。また、朝日さんを支援する運動は生存権の権利性についての国民の認識を広げ、社会保障に関わる政府の予算措置の考え方にも大きな影響を及ぼしました。
 
【書籍情報】
2014年5月、あけび書房から刊行。編者は生存権裁判を支援する全国連絡会。定価は本体800円+税。