論稿「法制審の動向と袴田再審決定」 筆者:H・O
2014年6月16日
 
 元裁判官で袴田事件の弁護団の一員としても活動してきた秋山賢三さんの論稿です。48年間獄舎に閉じ込められた後にようやく再審開始が決定した袴田事件の捜査、裁判、最新の敬意を振り返りながら、そこから導き出されるべき教訓を示し、そこから現在法制審で行われている刑事司法改革の検討の問題点を明らかにしています。
 秋山さんは袴田事件に関わる一連の経緯から見えてくるものとして拷問的取調べの問題をあげ、捜査の可視化が行われていれば袴田さんが嘘の自白をすることも、起訴されることもなかった可能性が強いと指摘します。また、そうした捜査の問題点を見抜けず死刑を言い渡した第一審判決を批判します。その上で、現在法制審では取調べの可視化の検討などがきわめて不十分であるとして、いったん作業を停止すべきと強く警告しています。
 秋山さんは袴田さんを48年間獄中に閉じ込めることになった司法・裁判所の劣化も指摘します。最近明らかにされている「エリート裁判官」「中間層裁判官」の危機意識にも注目しつつ、無実の人の生命までも奪うことのないよう司法を変える必要性を力説しています。
 
【論文情報】
「法と民主主義」2014年5月号に所収。筆者は秋山賢三さん(元裁判官・弁護士)。