講演録「『法服の王国』を生きる人たち − 裁判官の戦後史を描いて」 筆者:H・O
2014年6月9日
 
 原発訴訟を描いた小説『法服の王国』(産経新聞出版)の著者・黒木亮さんが、現職・元職の裁判官への取材を通して感じたことなどが述べられた講演録です。黒木さんは長く金融の仕事にたずさわってきましたので、金融業界と比較しながらの裁判所・裁判官の組織や仕事ぶりへの印象も語っておられ、興味深いものとなっています。黒木さんはこれまでの原発訴訟について「裁判所にマンパワーがない状況で出された、あるいは最初から結論ありきで判決が書かれたケースが少なくないのではないかという感触を持っています」と述べ、その上で、法曹一元や証拠開示制度導入の必要性など、裁判所に望むことを提言しています。イギリスでの生活の経験にもとづく意見なども、なるほどと思わせます。
 黒木さんは多くの裁判官たちが様々な困難に直面しながらも、日本国憲法の理念にもとづく仕事・生き方をしてきたということも、共感を持って明らかにしています(当サイトは現職・元職の裁判官30人の連続講演会「日本国憲法と裁判官」(同名の書籍が刊行されている。こちら。)の模様も紹介してきました。こちら。)
 
【論文情報】
月刊「世界」(岩波書店)2014年5月号に収載。筆者は小説家・黒木亮さん。