書籍『レクチャー日本の司法』(その1) 筆者:H・O
2014年4月14日
 
 日本の司法制度のしくみと現状、その課題を全面的に、また市民・学生などにわかりやすく解説する書です。
 第1章「生活のなかの司法・裁判 −その意義と期待」はまず、司法と裁判の制度と意義を概観しながら、「司法は誰のためのものか?」と問います。司法・裁判には、法的問題の正しい解決を求める裁判当事者=利用者の期待に応えることが要請されます。しかし、いまなお多くの市民は司法・裁判に直接的に関わっているわけではありません。「司法はその利用者のためだけではなく、秩序維持や法の支配の貫徹などの公共的な目的を実現する」という性質も持ち合わせており、少なくない市民にそのような感覚が強くあるようにも思われます。本章の解説を読みながら考えさせられたことの一つです。
 本章では、日本人の裁判や法に対する意識についての分析も試みられています。日本人の「訴訟嫌い」の実態とその評価について多面的に検討しつつ、21世紀に入ってからの司法制度改革の経緯・状況も視野に入れながら、その変化に注目しています。
 司法をめぐる状況の変化として、裁判外の紛争解決手続(ADR)の機能と発達などについても解説されています。

<続く>
 
【書籍情報】
2014年2月、法律文化社から刊行。編者は川嶋四郎・同志社大教授と松宮孝明・立命館大教授。定価は本体2,500円+税。