書籍『小さな歴史家をめざして −私の弁護士時代』 筆者:H・O
2014年3月31日
 
 弁護士である田川和幸さんが、弁護士としてたずさわった事件・裁判などの経験を綴った書です。地位確認請求訴訟、道路運送法違反被告事件、関税法・薬事法違反被告事件、ビラ貼り弾圧事件、公職選挙法違反教唆被告事件、土地収用裁決申請事件、収賄被告事件、スモン訴訟、傷害致死被告事件、殺人被告事件、業務上過失致死被告事件などが紹介され、代理人として、あるいは弁護人として、それらにどのような問題意識で関わり、どのような役割を果たしたのかが語られています。そして、いずれの事件でも依頼者に身を寄せて働いたということがよくわかります。本書には、田川さんの、公害審査会委員としての仕事や市民運動の経験も収められています。それは、多くの事件とその教訓を語り継ぐ、まさに“歴史家”の仕事と言ってよいと思われます。
 本書からは、社会の多面的な問題に司法が関わっており、その役割が重要であることがリアルに伝わってきます。それぞれの事件・裁判の法的な論点などを探求するためには専門的な書籍とあわせて読む必要があるでしょうが、本書は司法や弁護士が果たしている役割をコンパクトに示すものとなっています。田川さんは裁判官として働いた経験を持っており、裁判官の思考についての考えなどもところどころに披露されています。
 
【書籍情報】
2014年2月、日本評論社より刊行。著者は田川和幸さん(弁護士)。定価は本体2,500円+税。