『絶望の裁判所』(その1) 筆者:H・O
2014年3月3日
 
 元裁判官・瀬木比呂志さんが、裁判所をめぐる問題点を、自らの体験をまじえて深く抉り出す書です。最高裁事務総局や調査官も経験し、最高裁の中枢のこともよく知った上での告発は迫力があります。裁判所の問題点を綴る書は多数ありますが、この本で明らかになる、裁判所・裁判官をめぐる生々しい現状と姿、瀬木元裁判官の痛烈な分析は、司法について考える人は是非読んでおきたい書と思われます。
 第1章では、瀬木元裁判官が裁判官在任中に経験したことを具体的に明らかにしています。同趣旨の裁判の提起に対しては同じような決着の仕方をしようと、裁判所内で「事前談合」のようなことが行われていたこと、裁判所内の所長代行判事選挙が「出来レース選挙」になっていたこと、などを告発しています。
 瀬木元裁判官は、調査官となった時期に経験した最高裁判事の青法協問題に関わる言動についても告発しています。最高裁の裁判官と調査官が集まる場で、複数の最高裁判事がかつての青法協裁判官への不利益取扱いなど関わったことを、いわば自慢気に語ったというのです。その証言に接し、最高裁とその判事をめぐる状況に暗然とさせられます。
 第2章は、その最高裁判事たちの素顔を厳しく分析しています。また、裁判員制度導入をめぐる裁判所内の「抗争」なども明らかにしています。

<続く>
 
【書籍情報】
2014年2月、講談社から講談社現代新書として刊行。著者は瀬木比呂志氏(元裁判官、現在明治大学法科大学院教授。定価は本体760円+税。