書籍『刑事裁判のいのち』(2) 筆者:H・O
2013年10月21日
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 本書には最近の「法学セミナー」誌に木谷明・元裁判官が寄稿した、刑事裁判に関わる6つの「巻頭言」が収載されています。刑事裁判のあり方、その改革の課題などが簡潔に綴られています。
 本書に収められている講義録「強すぎる検察(検察官司法)と裁判員制度」は話し口調なので読みやすく、内容的にも刑事裁判をめぐる問題点と改革課題についての説得的な説明と率直な主張・問題提起になっています。無辜を罰しないことを重視する立場からの熱のこもった講義です。元の職場である裁判所に配慮した言い回しも多いのでしょうが、裁判所内部の事情に通じるエピソードは興味深いものです。質疑応答の部分は特に臨場感があり、刑事裁判を考える際のイメージを膨らませてくれます。
 木谷明・元裁判官は刑事司法をより無辜を罰しない方向に改革していく上で裁判員制度導入はその契機になりうるとの考えを明らかにしています。

<続く>
 
【書籍情報】
2013年8月、法律文化社から刊行。著者は元裁判官・木谷明さん。定価は本体1,900円+税。