論考「秋葉原・職務質問事件から見えてくる警察の実態」(その2) 筆者:H・T
2013年9月16日
(前回からの続き)

 清水弁護士は、警察が職務質問をする目的は、犯罪を減らすことか、それとも軽犯罪法や銃刀法で検挙したという実績をつくりたいことか、という質問に対して、「後者です。警察庁と国家公安委員会は毎年、実績評価書を作成し、来年はもっと増やすべきだという具体的な数字を各市町村・警察署に割り振り、現場の警察官にノルマを課していると述べています。悪質な犯罪は普通は秘密裏に行われるため、街頭での職務質問ですぐに犯罪との関連性が分かるものはほとんどないが、予算の確保と人員の増強が目的だということです。

 では、どうしたら良いのでしょうか。みだりに職務質問された場合、市民から警察の監察室に通報することができますが、同部署は組織防衛のため工作するのであまり効果はないと述べています。マスコミの記者クラブも警視庁の中にあるので記者は警察と親しく社会問題化しないとのことです。マスコミは経営安定を第一に考えるので政府の広報機関となることに違和感を抱かず権力と対峙することはできないという指摘は重要です。裁判官も「裁判官ムラ」の司法サラリーマンであり、警察官が悪いことをするはずはないという先入観があることも問題としています。

 結局、戦後の警察を作るときに、戦前の特高警察を実質的に生き残らせてしまったことに問題がある、日本では「相棒」という刑事ドラマのように警察官を信じるところからスタートしているが諸外国は違う、という問題提起など、見過ごせない論稿です。市民の力で辛抱強く警察の体質を変えていくしか方法はないということでしょう。
 
【書籍情報】
「マスコミ市民」2013年9月号所収。NPO法人マスコミ市民フォーラム発行。著者は清水勉弁護士(聞き手は石塚さとし編集長)。648円+税