論考「秋葉原・職務質問事件から見えてくる警察の実態」(その1) 筆者:H・T
2013年9月9日
 月刊「マスコミ市民」2013年9月号で、警察の問題に詳しい清水勉弁護士(「明るい警察を実現する全国ネットワーク」代表)が「市民が闘った訴訟の成果」というサブタイトルで語っています。秋葉原を歩行中に警察官から職務質問を受け、持っていたナイフ付き万能工具を没収・廃棄され指紋・顔写真もとられた会社員が東京都(警視庁)と国(警察庁)に指紋・顔写真のデータ削除と慰謝料を求めた事件の民事判決が、今年の5月28日、出されました。市民が職務質問に出会う機会は比較的多いと思われるところ、警察や職務質問の実態について詳しく触れていますので、お薦めの論考です。

 警察官職務執行法第2条第1項は、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者…」を、停止させて質問することができると規定しています。本件では、警視庁側は会社員が警察官らと眼が合ったときに視線を逸らせたと主張し証言しましたが、裁判所は「当時、雨が降っており原告が不透明の傘を差して早歩きしていたことからすると目が合うことはなく、視線を逸らせたこともあり得ない」と判断しました。警察官の偽証を認定したわけです。さらに、被告側は原告が任意に応じたのだから適法だと主張しましたが、そもそも職務質問は任意な制度です。よって職務質問は違法だったと認定して都に5万円の支払いを命じました。所持品検査も職務質問に付随して行われる以上、違法だと判示しました。

 職務質問は身柄を拘束される時間は2〜6時間と比較的短いこともあり、泣き寝入りするのが普通であり、社会問題化しないと筆者は述べています。「今回のような職務質問に関する裁判を考えた弁護士は、今までいなかったと思います」。

 しかし、従来から、全国的に警察官による違法な職務質問が横行していることが問題になっています。指紋・顔写真もとられることが多くプライバシーの重大な侵害です。市民が原告になって国賠訴訟を行い本件(一部)勝訴判決を得た意義は大きいと紹介しています。
(続く)