書籍『誰が法曹業界をダメにしたのか』(その1) 筆者:H・O
2013年8月19日
 タイトルによると法曹業界はいま、まるでダメなところになっているとのことです。どういうことなのでしょうか。読んでみると、法曹業界の酷さを舌鋒鋭く告発するだけでなく、サブタイトルにあるように「もう一度、司法改革を考える」課題も提示していると思われます。
 多くの国民にとって司法とか裁判とかは無縁で、関心を持ってもなかなかその全体像は見えづらいと言えるでしょう。2001年に司法制度改革審議会が意見書をまとめ、それにもとづく改革が10数年すすめられてきましたが、多くの国民の司法への認識はあまり変わっていないかもしれません。日本の司法・裁判は全体として法律にもとづいて公正・公平に運営されていると、いまなお多くの国民が思っているようです。また、弁護士費用をかけてまで弁護士の世話にはなりたくないと思っているのではないでしょうか。
 ただ、国民が裁判員裁判に参加して裁判の意義を体感しはじめ、冤罪事件などの報道を通して日本の刑事司法には問題があると感じるようにはなってきているので、そのあたりから司法・裁判のことをもう少し考えていきたいものです。
 司法のことを国民が理解していく上で、弁護士と弁護士会の役割は決定的に重要だと思われます。弁護士は様々な人々の多様な法的ニーズや裁判の状況に接しています。その状況や意見を集約する弁護士会が行う司法改革への提言の持つ意味を大きいのではないでしょうか。
 本書では、2人の弁護士によって司法の現状についての問題点の指摘と改革課題の提起が行われています。弁護士会が提起している提言などとはかなり内容を異にしているようですが、市民がなるほどと思うことが多く含まれています。
 次回以降、その内容について紹介していきます。

<続く>
 
【書籍情報】
2013年8月、中央公論新社から中公新書として刊行。著者は岡田和樹氏・斎藤浩氏(いずれも弁護士)。定価は777円(税込み)。