書籍『日本人と裁判 −歴史の中の庶民と司法』(その7) 筆者:H・O
2013年6月24日
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 戦後日本国憲法が制定され、司法の位置づけ・あり方も大きく変わりました。司法も国民主権原理の下におかれることとなりました。司法権は独立することになり、裁判所には違憲法令審査権が付与されました。憲法には「裁判官の独立」も明記されました。憲法には刑事手続きに関する規定も多く盛り込まれ、刑事司法制度も大きく変わりました。簡易裁判所、家庭裁判所も創設されました。これらの改革にはGHQのイニシアチブが発揮されました。
 こうして生まれ変わった日本の裁判所の裁判官確保策をめぐる要求などから、1962年、内閣に臨時司法制度調査会が設置されました。しかし、そこでの議論は「官僚司法の強化」への動きにつながっていき、最高裁による裁判官統制が強まりました。その結果「司法の危機」が生じることになりました。
 1980年代以降には、冤罪事件などを通して、司法の民主化への国民の関心が広がり、1999年に司法制度改革審議会が設置され、2000年代に入り、その意見書に基づく改革がおこなわれることになりました。
 著者・川嶋四郎教授はこのように戦後の司法改革の経緯を振り返りながら、専門としている民事訴訟の改革課題についても提起しています。
 
【書籍情報】
2010年、法律文化社から刊行。著者は川嶋四郎・同志社大学教授。定価は本体2,500円+税。
 
*当サイトでは以前、「司法の危機」に直面した裁判官の連続講演会の模様を紹介しました。こちら。その講演録集も出版されていますのでご案内します。こちら