書籍『日本人と裁判 −歴史の中の庶民と司法』(その6) 筆者:H・O
2013年6月17日
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 10月1日は「法の日」とされ、毎年各地の裁判所などが記念行事を行っています。この日が「法の日」になったのは、1928年(昭和3年)のこの日に陪審制度が施行されたからだそうです。
 陪審制度は、首相として最初の政党内閣を組閣した原敬が尽力した結果実現したとされます。当時は大逆事件をはじめとする検察による国民の弾圧への批判が高まっており、そのような背景のなかで原敬が陪審制度の必要性を説くようになったようです。ただ、そこには天皇の名で行われていた裁判によって生じる天皇の責任問題を回避したいという思惑もあったようです。また、それまで続いていた藩閥官僚政府の権力への対抗として政党人たちが陪審制度の導入を主張したというところもポイントだったようです。
 著者・川嶋四郎教授による陪審制度導入の経緯・背景の分析は興味深いものとなっています。

<つづく>
 
【書籍情報】
2010年、法律文化社から刊行。著者は川嶋四郎・同志社大学教授。定価は本体2,500円+税。