書籍『恵庭OL殺人事件 −こうして「犯人」は作られた』(2) 筆者:H・O
2013年2月11日

前回からの続き>

 前回に紹介したように、恵庭OL殺人事件では、OさんがHさんを殺した直接的な証拠もなく、Oさんが無実を主張しているのに検察官はOさんを起訴しました。にもかかわらず、Oさんは一・二審で有罪とされ、2006年、最高裁で確定しました。
 被告人が被害者を殺すなどしたことを直接的証明する証拠がないときの、いわゆる情況証拠による事実認定に関して、その後最高裁は「情況証拠によって認められる間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要する」との考え方を示しました。最高裁も、証拠価値の乏しい情況証拠を束ねて安易に有罪に導くことに警鐘をならしている、とこの本の中で白取祐司・北海道大学教授が明らかにしています。そして、この最高裁の判断に照らしても恵庭OL事件でOさんを有罪認定したことには疑問が残る旨述べています。
 この本の帯には「あなたなら『有罪』にできますか?!」と記されています。事件の中には直接証拠がなく情況証拠しかないものもあるでしょう。恵庭OL殺人事件はそうでした。読者の皆さんが裁判員に選ばれ、このような事件を担当する時に、どのような判断をすることになるのでしょうか。そのようなことを考え、語り合うことが、真の意味での司法改革に近づいていくことになるのではないかと思います。

 
【書籍情報】
2012年6月、日本評論社から刊行。著者は伊藤秀子弁護士。定価は本体2,000円+税。