論稿「『発達障害』と刑事司法」第1回 筆者:H・O
2012年12月3日

 裁判員裁判では裁判員が事実認定だけでなく量刑の判断にも参加します。このことについては批判意見が多くあり、その実際が検証するうえで参考になる、ジャーナリスト・佐藤幹夫さんの論稿です。
 10歳くらいから30年にわたって引きこもり生活をしてきた男性が、その生活援助者である実姉を刺し殺してしまう事件が起きました。裁判では、事実認定に争いはなく、量刑が争点となりました。2012年7月30日、大阪地裁は裁判員裁判で、この被告人に懲役20年の判決を言い渡しました。それは検察の求刑16年を上回るものでした。被告人はアスペルガー症候群の影響があり、長期間刑務所に収容する必要がある、としたのでした。この判決に対しては、各界から、障害を理由に刑罰を重くすることは差別だ、発達障害者に対する偏見・差別を助長する、などの強い批判が出されることになりました。
 この論稿は、こうした事件・裁判の経緯と問題点を整理し、さらにこうした事態が生じている背景や裁判員制度上の問題点についての識者のコメントを紹介するものです。裁判員制度に関わる改革課題を考えさせてくれます。
 月刊誌「世界」(岩波書店)2012年11月号に収載されています。