書籍『裁判員と死刑制度 −日本の刑事司法を考える』(その1) 筆者:H・O
2012年7月30日

 2009年、裁判員制度がスタートしました。
 この本は、その前年に聖学院大学で開催された講演会での伊藤和子弁護士と寺中誠・アムネスティ・インターナショナル日本事務局長(当時)の講演録と、この二人によるその後の対談録を収載したものです。
 第一部は、伊藤和子弁護士の講演「裁判員制度とこれからの課題」です。
 伊藤さんは、弁護士として刑事裁判にたずさわってきた経験から、日本の刑事裁判が「疑わしきは被告人の利益に」という原則に則っていないことを痛感し、司法への市民参加が必要だと考えるに至ったと述べます。そして、本来はアメリカの陪審制度のような制度が日本に導入されるべきだとし、ただ実際には日本の裁判所などの「抵抗」によって、日本では陪審制度が実現せず、導入されることになった裁判員制度には不十分さ・問題点があると指摘します。同時にこんごの市民の声次第で、司法への市民参加によって刑事裁判を本来のものへと改革されている可能性があることを明らかにしています。

<つづく>

 
【書籍情報】
2010年、新泉社から刊行。著者は伊藤和子弁護士と寺中誠・アムネスティ・インターナショナル日本事務局長(当時)。定価は1,200円+税。