論文「法曹は聖職か、サラリーマン・ビジネスマンか
−司法修習生の修習資金貸与制に寄せて」
筆者:H・O
2012年4月30日

 国民は法律家という職をどう見ているのでしょうか。
 これまでは、裁判官や検察官は“正義を実現する人”、弁護士は“国民の権利を守る人”というイメージが強かったといえるかもしれません。したがって、法律家は聖職の一つとされてきました。
 ところが、少女買春をする裁判官、証拠をねつ造する検察官、預かり金を横領する弁護士などの存在が明らかになってくるにつれ、人々の法律家に対するイメージがだいぶ変わってきているようです。法律家の方ももはや聖職ではなく、サラリーマン・ビジネスマンのような感覚が広がりつつあるようです。
 司法修習生にはこれまで“給料”が支払われていましたが、2011年からそれは貸与制になりました。法律家に対する国民の意識の変化の中で、このことをどのように考えるべきなのか、また、貸与制への移行はこれからの法律家の意識や仕事にどう影響していくのか、こうしたことについて問題提起する論文です。
 若い法律家や法律家志望の学生などに向け、法律家は「他人の苦しみへの想像力を忘れないようにしたい」と呼びかけ、法律家が真の聖職者になってほしいとの期待を語っています。

 
【論文情報】
「法学セミナー」誌2012年5月号に所収。筆者は平野哲郎・龍谷大学教授(弁護士・元裁判官)。