論稿「裁かれるべきは検察か − 小沢裁判で見えた司法の『闇』」 筆者:H・O
2012年4月23日

 4月26日、小沢一郎・元民主党代表が起訴された裁判の判決が出されます。小沢氏は政治資金収支報告書への虚偽記載に関わったとされて起訴されました。当初検察はこの事件を立件できず起訴を断念しましたが、検察審査会が起訴相当という議決を2回行い、裁判になりました。
 ジャーナリストの江川紹子氏はこの裁判の経過を紹介しながら、小沢氏を有罪とする証拠がまったくといっていいほどないことを明らかにしています。そして、小沢氏の秘書らへの検察の取調べの問題点を厳しく指摘・警告しています。検察がこの「事件」で自分たちが描いた筋書きで強引に取り調べ、それに違背する証拠が出てきたら、それを隠蔽していることなどです。こんにちの刑事司法の現状がよくわかります。
 江川氏はまた、検察審査会をめぐる問題点も指摘しています。検察審査会が起訴相当という議決を2回行うと、その事件は強制起訴されることになりました。この制度は、裁判員制度と同時に、3年前に導入されました。それは検察が警察官や検察官などの身内をかばうことを防ぐことなどを目的にはじまり、「司法への国民参加」の一つとして評価されうるものですが、江川氏はこの制度についての検証も必要であると問題提起しています。
 この論稿は月刊「世界」2012年5月号に収載されています。