書籍『司法が認定した日本軍「慰安婦」−被害・加害事実は消せない!』 筆者:H・O
2012年4月2日

 2011年末、日韓首脳会談で、韓国・李明博大統領が野田首相に対して日本軍「慰安婦」問題の解決を求めました。戦時中日本軍が朝鮮の女性などを強制的に「慰安婦」にしたことは広く知られることです。しかし、それは事実に反すると主張する政治家などがたびたび現れ、被害者の怒りを買う事態が繰り返されています。この間、韓国や中国などに住む元日本軍「慰安婦」は日本政府に対して謝罪と賠償を求め、日本の裁判所にも訴えてきました。10件にのぼったその裁判は2010年にすべて終了しましたが、その訴えを裁判所はどのように判断してきたのでしょうか。
 この裁判では、山口地裁下関支部が国に対して賠償を命じることもありました(1998年)が、その判断は最終的に最高裁で覆されることになりました。しかしながら、一連の裁判では、「慰安婦」が元日本軍から受けた被害・加害の事実の多くが認定されました。この本では各裁判でどのような事実認定が行われたのかが整理されています。
 裁判の結論には多くの人々が不服に思っているわけですが、裁判所が適正な手続きで公正な事実認定をしている面があるということも、それはそれで評価される必要があるでしょう。そのような意味で、司法のあり方を考える素材にもなる書、と言えるかもしれません。

 
【書籍情報】
2011年、かもがわ出版から「かもがわブックレット」として刊行。編著者は坪川宏子さん(「慰安婦」問題解決オール連帯ネットワーク事務局長)と大森典子さん(弁護士)。定価は本体600円+税。