書籍『最高裁の違憲判決 −「伝家の宝刀」をなぜ抜かないのか』 筆者:H・O
2012年2月27日

 法律を違憲とする最高裁の判決はこれまでわずか8件しかありません。なぜ違憲判決が少ないのかを検証する本です。
 本書はこれまでの17代にわたる最高裁長官の考え、その就任にいたる経緯などを歴史的にたどりながら、それぞれの時期に最高裁の違憲審査がどのように行われてきたのかを分析しています。もちろん最高裁の判断はそれぞれの事件の内容や長官以外の最高裁判事の考えなど様々な要素によって決まっていくのであって、それは総合的に分析されるべきです。ただ、長官や判事の任命をめぐる時々の諸状況をたどりながら、最高裁が違憲審査にどのように向き合ってきたのかを振り返ることは、今後のあり方を考える重要な素材になります。
 最高裁の違憲審査の論理とその推移が具体的な事件を通して整理されていることも本書の特長です。その全体状況をどう見るかについての泉徳治・元最高裁判事、棟居快行・阪大教授のインタビューも掲載されています。
 単純な分析は禁物ですが、最高裁の違憲審査にも今般の司法制度改革は大きな影響を及ぼしていることは間違いなく、それはこの本の叙述からも確認できます。

 
【書籍情報】
2012年、光文社から光文社新書として刊行。著者は山田隆司氏(博士(法学)。専攻は、憲法・メディア法。)。定価は本体880円+税。