論稿「志賀原発訴訟を踏まえて −今後の原発のあり方を考える」 筆者:H・O
2011年7月11日

 北陸電力志賀原発二号機の設置認可をめぐって、2006年3月24日、金沢地裁は全国で初めて民事差止め判決を出しました。この判決は上級審で覆されましたが、筆者の岩淵正明弁護士(金沢弁護士会)は原発問題を担当したことのある裁判官の述懐に照らしながら、一審判決の特徴を明らかにしました。
  かつて柏崎刈羽原発訴訟に関与した元裁判官は原発訴訟について、(1)裁判官は、技術面は素人、(2)原発を止めたら電気が足りなくなるのではないか、(3)裁判官も世論・国の動向に配慮、という裁判官とその意識をめぐる問題点を語りました。岩淵弁護士はこうした観点との関係で志賀原発二号機訴訟を分析したのです。具体的には、第一審の裁判官は原発設置者にその安全性の相当程度の立証を求めたこと、原子炉運転が差し止められても電力需給に特段の支障にならないことを認めたこと、などの特徴を明らかにし、そうではなかった上級審の判決を批判しました。
  岩淵弁護士はまた、今後の原発訴訟には脱原発の世論の高まりが反映する可能性があることも示唆しました。司法への国民の監視はいよいよ重要です。
 
  この論稿は青年法律家協会弁護士学者合同部会発行「青年法律家」(2011年6月25日号)に収載されています。