講演録「最高裁は変わったか? ―判例分析から」 筆者:H・O
2011年5月30日

 法学館憲法研究所の浦部法穂顧問(神戸大学名誉教授)の講演録(講演日は2010年4月22日)です。日本民主法律家協会の「法と民主主義」2011年5月号に掲載されました。
  浦部教授はこの講演で、最近10年間の最高裁での45件の憲法関連判例の内容、判決の要旨、反対意見、担当裁判官などを紹介されました。その一覧表には高い資料的価値があると思われます。そして、「福祉・社会保障と外国人の分野」「非嫡出子差別・在監者の権利」「選挙関係」「政教分離関係」「思想・言論の自由関係ほか」等々それぞれの判決内容の特徴を詳しく分析しました。そして、総じて、「イデオロギー的対立にコミットしない範囲では、日本国民の権利保障という点に関する限りは、純粋法律論的な枠組みを貫こうという姿勢が見えるのではないか」「しかし、そうではあっても、ひとたびイデオロギー的対立にかかわる事件になると、イデオロギー的主張、つまり左翼的主張に有利な判断はしないという姿勢は、従来どおり堅固に貫かれていると言えます。それから外国人に対して冷淡という点も変わっていません」などと分析し、実務上の課題も問題提起しました。
  最近、最高裁は変わりつつある、と評価されることがよくありますが、具体的な判決内容の分析の上に立った浦部教授の評価には説得力があります。