書籍『あなたが裁く! 「罪と罰」から「1Q84」まで − 名作で学ぶ裁判』 筆者:H・O
2011年2月28日
 裁判員制度がスタートし、一般市民に刑事裁判の仕組みなどを解説する本が溢れていますが、この書では名作文学・名作映画のシーンやストーリーを紹介しながら、そこから刑事裁判の手続きを学ぶことができます。元裁判官である著者が刑事裁判のあり方も含めてわかりやすく解説しています。
刑事裁判では検察官が十分に立証してはじめて被告人が有罪になります。裁判官・裁判員はそこに「合理的な疑い」を拭えない場合は無罪としなければなりません。この書では、このような刑事裁判の基本的な原則とその趣旨もわかるようになっています。そして、被告人が有罪の場合の量刑の考え方を詳しく解説しているところもこの書の特徴だと思われます。たとえば「通常」の殺人をおかした被告人の量刑の相場を示し、「通常」ではない、様々な態様の殺人の場合の量刑とその考え方が説明されています。裁判員裁判では、裁判員は量刑についての判断も行いますので参考になります。
  全体的に刑事裁判の実務について、わかりやすくも精緻な説明となっています。元裁判官ならでは、という感じで、説得的ですが、国民の司法への参加の道が広がったいま、従来の法律専門家中心の実務に囚われずに考えてみることも必要だろうと思われます。
 
【書籍情報】
著者は森炎さん(弁護士・元裁判官)。2010年10月、日本経済新聞出版社が刊行。定価は本体1500円+税。