「仮釈放なしの終身刑」を考える  
2014年12月1日
シンポジウム「死刑を考える日」(11/15)
 シンポジウム「死刑を考える日」が11月15日、青山学院大学で開催されました。シンポジウムの主催は日本弁護士連合会です。
 大迫唯志・日弁連副会長の開会挨拶に続き、駐日英国公使であるジュリア・ロンクボトム氏が英国と欧州連合(EU)の代表として、英国の死刑廃止にいたるまでの経緯を解説しました。また、死刑廃止前後の各国の殺人事件数の変化などの事例を紹介しながら、死刑制度存続には犯罪抑止力があるとする主張は必ずしも証明できないことを指摘しました。また、政府が死刑廃止を決めると世論も廃止の方向に導かれる、ということも紹介しました。加えて、日本においても死刑に関する十分な情報が国民に与えられれば、その世論も変わっていく可能性があると述べました。そして死刑の賛否はその国の判断に委ねられるが、英国と欧州連合(EU)は死刑廃止を望んでいることを述べました。
 次に、袴田事件の袴田巌氏と姉の秀子氏が死刑廃止を訴えました。そして、袴田事件弁護団事務局長の小川秀世弁護士と秀子氏が、巌氏が長期間勾留されたことにより拘禁反応という精神障害の症状が出たことを明らかにしました。小川弁護士は再審決定の意義、原審が誤判となった原因を解説しながら、死刑制度の誤りも指摘しました。
 パネルディスカッションには、黒原智宏弁護士(日弁連死刑廃止検討委員会事務局次長)がコーディネーター役で、笹倉香奈・甲南大学法学部准教授、野呂雅之・朝日新聞大阪社会部「災害専門記者」、小川秀世弁護士、菊田幸一弁護士・明治大学名誉教授、小川原優之弁護士(日弁連死刑廃止検討委員会事務局長)が出席し、死刑廃止に向けての道筋を中心に議論されました。死刑存置支持が多い国民世論に関しては、誤判の実態や死刑の情報が広く国民に伝えられるべきこと、死刑の賛否の世論調査に際しては、「仮釈放なしの終身刑」があった場合の判断も求めるべきことが述べられました。死刑廃止の法案づくりでは、死刑廃止にいたる方策として、「仮釈放なしの終身刑」も検討に加えるべきことなどが話し合われました。
なお、「仮釈放なしの終身刑」が導入されると、他国では死刑が減るが従来無期とされたものが終身刑となる例もあるとする批判も出されました。
 閉会挨拶では、加毛修弁護士(日弁連死刑廃止検討委員会委員長)が現行の懲役刑の処遇の見直しの必要性に言及しました。(T.S)