袴田事件は終わっていない!9・23再審無罪を勝ち取る全国集会
〜検察の証拠隠しを許さず即時抗告を取り下げさせよう!〜
 
2014年9月29日
 9月23日、東京・文京区民センターで、「袴田事件の再審無罪を勝ち取る全国集会」が行われました。若者から年配まで230人もの参加者で会場が埋め尽くされ、大手メディアも複数取材に来ていました。
 集会ではまず、石井信二郎さん(袴田巖さんの再審を求める会共同代表)より開会の挨拶がありました。袴田事件は2014年3月27日に画期的な判決がなされ、異例の即日釈放となったことから、世間では解決したと思っている人も多いが、袴田巖さんはいまだ「確定死刑囚」とされていて、袴田事件が決して終わっていないことを全国、全世界に訴えていかなければならないと強調しました。
 続いて、村崎修弁護士から弁護団報告がありました。検察が今まで隠していた、死刑判決の決定打となった「5点の衣類」発見直後の写真ネガを提出し、検察が謝罪する事態となっていること。静岡地裁で、最重要証拠が捜査機関によってねつ造された疑いが相当程度あるとまで指摘され、即時釈放となっているにもかかわらず、即時抗告をして再審開始決定を先延ばしにしてくる検察の非道さ。現在の刑事司法制度がどれほどひどいものなのかということなどが怒りと共に熱く語りました。
 ゲスト講演では、映画監督であり作家である森達也さんが登壇しました。
 まず、メディアの報道について、被疑者段階からあたかも真犯人であるかのような先入観を与える報道が冤罪を助長していることを指摘し、推定無罪に反する報道を面白がる国民に苦言を呈しました。
 次に、死刑制度に関してノルウェーの刑罰のあり方を映像でご紹介しました。
 オスロにある軽犯罪者の刑務所は、歴史的建造物のような建物で、中では受刑者が刑務官や大学教授と同じ食卓を囲んでいました。受刑者には一般の独身者が暮らすような個室が与えられ、タバコ・CD・ゲームも自由でした。冷蔵庫には旬の野菜やフルーツが入っており、共同のキッチンでナイフを使って自由に料理することもできるそうです。重犯罪者は、島にある家で共同生活をすることになりますが、鍵は無く、まるでリゾートハウスのような快適そうな家でした。島には図書館もあり、教育を受けたいと思えば大学レベルの教育まで受けられます。定められた時間に作業をすればその他の時間は自由に使ってよく、模範囚になれば、休暇をとって帰省することもできるそうです。ノルウェーではどんな凶悪犯罪でも最高刑は21年であることから、スムーズに社会復帰し、再犯させないことが重要視されているようです。
 ほとんどの犯罪は三つの不足(幼年期の愛情の不足、青年期の教育の不足、現在の貧困)により起こる。犯罪者は既に十分苦しんでいるのだから、これ以上刑罰を与えても仕方がない。むしろ不足を補う必要がある。このような考えが国民に浸透しており、このような政策が受け入れられていました。
 このような政策の効果なのか、逃亡者はおらず、再犯率も極めて低く、ノルウェーの人口は約500万人ではあるが、昨年の殺人事件は1件だということでした。
 その後、アムネスティ・インターナショナル日本事務局長の若林秀樹さんと森達也さんの対談がなされました。メディアの報道はひとつの視点に過ぎないという意識で想像力を働かせることの重要性や、「組織」というものの性質について鋭い指摘がなされました。
 袴田巖さんを救う市民の会の寺澤暢紘さんからは、ビデオ上映による袴田さんの近況報告がありました。
 リレートークでは、まず、鈴木宗男元衆議院議員を父に持つ、鈴木貴子衆議院議員が、ご自身の体験や、冤罪を起こさない立法に尽力する旨のお話をしました。長年にわたり、袴田さんの支援に力を注いできたボクシング界からは、新田渉世さん(日本プロボクシング協会袴田巖支援委員会委員長)や八重樫東さん(元WBC世界フライ級王者)が登壇され、早期の再審開始と無罪判決を強く求める訴えをしました。布川事件の冤罪被害者であり、現在国家賠償請求中の桜井昌司さんは、弁護士が証拠隠しや嘘をつけば犯罪になるのに、警察や検察の数々の不正が犯罪として断罪されないのはおかしいとの指摘をしてくださいました。
 その後集会は、袴田巖さんの姉である秀子さんより、巖さんの日常報告を交えたご挨拶があり、集会アピール採決、閉会挨拶と続き、閉会となりました。
冤罪の温床、死と隣り合わせの数十年に渡る拘留、刑事司法のあり方を国民が考え、議論していく必要性を再確認させられた集会でした。(S・K)
 
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