三鷹バス痴漢冤罪事件を支援する (その1)  
2013年8月19日
生江尚司さん
(「三鷹バス痴漢冤罪事件を支援する会」事務局・国民救援会三多摩総支部)
 三鷹バス痴漢冤罪事件についてアピールの機会をいただいたことに感謝もうしあげます。
 痴漢冤罪は、普通のサラリーマンが、毎日利用している交通機関の中で、ある日突然、「痴漢です」と訴えられると、その一言で長期にわたって身柄を勾留され、否認すれば刑事裁判にかけられるという道をたどります。普通の市民が、日常から切り離されて非日常へ放り込まれるわけで、当事者でなければわからない辛さがあります。

「自分の夢に、生徒の前にもどりたい」

 28歳の青年教師だった津山正義さん(公立中学校教諭、起訴休職中)も、中学時代からの夢だった中学校の数学の教師という職に就き、担任のクラスをもった二年目にこの事件に巻き込まれました。そのために初めて受け持った教え子たちの卒業式にそっとたちあうことも許されませんでした。「彼らとの最後の時間をうばわれたことがいちばん悔しい」と言います。
 「サッカー少年だった頃、サッカーの上手なクラスの同級生は算数が苦手で、放課後、居残り勉強をさせられてしまうんですね。彼らがいた方がサッカーが楽しかったので、少しでも早く仲間を校庭に引っ張り出すために、得意だった算数を同級生に教えたとき、相手の『あ、そうか、わかった!』という嬉しさが伝わってきて僕自身も嬉しかった。それが僕の教師になりたいという気持ちの原点だと思います」と語る津山さんの顔は生き生きとしています。そんな津山さんを見ると、一日も早くこの非日常から解き放ち、自分の夢に戻してあげたいと強く思います。
 「私が必死になりたいのは裁判ではなく、教育なのです。私が立ちたいのは裁判官の前ではなく生徒の前なのです」と涙ながらに意見陳述で訴えた津山さんの思いは一審の裁判官には届かず、罰金40万円の有罪判決でした。教壇に戻るためには、どうしても東京高裁で逆転無罪をとらなければなりません。多くの市民の方にこの裁判に関心を持っていただき、ご支援をいただきたく思います。

三鷹バス痴漢冤罪事件とは

 2011年12月22日、午後9時半頃、JR吉祥寺駅から京王線仙川駅にむかうバスの車内で「スカートの上からお尻をなでた」として津山正義さんは逮捕されました。
 津山さんは、吉祥寺で同僚たちと二学期終了後の懇親会で飲食した後、交際相手とのデートのために勤務校に置き忘れた財布を取りに戻る途中でした。津山さんは、脱着がしやすいよう肩ひもを伸ばしたリュックをお腹側にかけてバスの後部に立っていました。しばらくすると前に立っていた女子高生が振り向き、睨みながらマスク越しに何かつぶやいたので、津山さんはトラブルを回避するつもりで「ごめん、ごめん」と言いました。すると女子高生は津山さんの手を掴んで「降りましょう」と言うので「勤務校へ向かうバスの中で騒ぎはいやだ」と思い、途中の停留所で一緒にバスを降りました。
 降りて初めて痴漢扱いされていることを知り、強く否定すると、女子高生は「じゃあ帰って下さい」と言うので、津山さんは仕方なくバス停から学校に向かって歩き出しました。ところが、女子高生は一台後から来たバスの運転手に「痴漢された」と訴えたため、この運転手と他2名が津山さんを追いかけて取り押さえ、津山さんは「痴漢の犯人」として逮捕、起訴されたのです。本年5月8日、東京地裁立川支部(倉澤千巌裁判官)で罰金40万円の有罪判決を受け、東京高裁に控訴しています。

ウール表面のキューティクルの画像
数々の物証が語る津山さんの無実

 この事件で、女子高生は痴漢行為を見たわけでも、痴漢をしている手をつかまえたわけでもありません。女子高生の「さわられた」という供述があるだけで、これを補完する目撃証言など客観的な証拠は存在しません。
 逆に、バスの車載カメラには痴漢があったとされる時間、両手のふさがった津山さんの姿が映っています。もっとも執拗に痴漢行為があったとされる午後9時32分から34分頃、津山さんは右手で携帯電話を操作し、左手でつり革につかまっているのです。同じ時間帯に発着信があったことを示す携帯メールの履歴もKDDIのサーバーで確認されており、痴漢はまったく不可能です。
 また、逮捕直後に行われた「微物鑑定」では津山さんの手から女性のスカートの繊維はまったく検出されませんでした。スカートの繊維はウール100%。ウール=羊毛は化学繊維にくらべると壊れやすく付着しやすい、同時に繊維表面のキューティクルという鱗状の構造によって付着すると脱落しにくい、という特徴があります。実際、弁護側の実験では14回実施して、14回とも手からスカートの繊維片が検出されています。
 車載カメラの画像では乗車時、リュックサックを左肩だけにかけていた津山さんの姿が確認できます。これが女性の臀部に接触することは同じ身長の人を相手にした再現実験でも明らかです(写真参照)。臀部の感覚の鈍さが痴漢の勘違いを招くことは、弁護団が実験を依頼した日大厳島研究室による鑑定でも示されています(一審では不採用)。事件の真相は、リュックが女性の体にあたり「痴漢」と勘違いさせたことが原因なのです。

<つづく>


「三鷹バス痴漢冤罪事件を支援する会」
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