鹿児島・大崎事件の再審を!  
2012年6月25日
平川明雄さん(原口アヤ子さんの再審をかちとる首都圏の会)
えん罪 鹿児島・大崎事件 原口アヤ子さん支援のために開催

―――まず、大崎事件とはどのような事件なのかをお聞かせください。

(平川さん)
 1979年、鹿児島県大崎町でKさんの遺体が自宅の牛小屋で発見され、Kさんの長兄とその妻アヤ子さん他2人が殺人等の容疑で逮捕されました。アヤ子さんは一貫して無実を訴えましたが、裁判で有罪とされ10年間服役しました。アヤ子さんは出所後に再審請求をし、2002年、鹿児島地裁が再審開始を決定しましたが、その後高裁・最高裁がその決定を覆しました。2010年、アヤ子さんは第二次再審請求を申し立てています。

―――アヤ子さんは一貫して無実を主張しているとのことですが、この裁判にはどのような問題があるのでしょうか。

(平川さん)
 Kさんの遺体が発見された2日後、Kさんの長兄と次兄が警察で犯行を認め、翌日殺人・死体遺棄の容疑で逮捕されました。その後警察はアヤ子さんが首謀者だとして、アヤ子さんも逮捕されました。アヤ子さんは全面否認のまま起訴されました。アヤ子さんは一審で懲役10年の有罪判決を受け、それが高裁を経て最高裁でも確定しました。なんと1年2ヶ月という早さです。ほとんど真面目な審理はされていないと思います。
 私が特におかしいと思うのは、全面否認するアヤ子さんと「共謀」したとされ、「自白」した他の3人の裁判は分離して行われたのですが、同じ裁判官が3人の犯行の心証を得てアヤ子さんの裁判に臨んだことです。公正な裁判ではなかったのです。
 Kさんの死因の判断も疑わしいことが判明し、2002年に再審開始が決定されるのは当然でした。ところが、検察の抗告を受けた高裁がその決定を破棄しました。その理由には驚かされます。「再審開始決定は・・・確定判決の安定を損ない、ひいては、三審制を事実上崩すことに連なるもの」だというのです。再審の制度自体を否定するような言い方には腹が立ちます。
 アヤ子さんは一貫して無実を主張しています。服役中には「罪を認めたら仮釈放してやる」と3度も言われましたが、無実の主張を貫きました。アヤ子さんのお話しを直接聞くと、彼女は無実だということがよくわかります。そのアヤ子さんの訴えに耳を貸さなかった裁判はあまりにひどいと思います。

―――平川さんがこの事件の支援をはじめた経緯、そして日本の刑事裁判の問題点についてのお考えをお聞かせください。

(平川さん)
 私は東京・千代田の職場の労働組合の仲間たちと千代田文化の会が開催した学習会で、演出家・松木圓(まつきまどか)さんから大崎事件のお話しを聞きました。その時にこんなえん罪は許されないと思い、仲間たちと「大崎事件の再審をかちとる首都圏の会」に参加したのです。
 私は労働者の労働条件改善を求める民事裁判などの経験もあり、裁判所は国民や弱者の立場に立たない判決を書くことが多いと思っていましたが、大崎事件のことを知り、刑事裁判のひどさを痛感するようになりました。国家権力に立ち向かう人の主張はほとんど認めない、という態度に終始しているようで、怒りを覚えます。

―――最後に、この間の経験を通して、日本の司法を変える課題についてのお考えをお聞かせください。

(平川さん)
 私は裁判の制度を抜本的に変える必要があると思います。無実の人を有罪にしても、その裁判官たちが謝るようなことはほとんどありません。再審などもプロの裁判官だけによって行うシステムを見直すことも検討すべきだと考えます。
 同時に、裁判官も「人の子」だとも思います。裁判官がまっとうな判決を出すよう、やはり、えん罪をなくそうと考える国民が広く手をたずさえ、横の拡がりをつくっていくことが大事だと思います。
 アヤ子さんはいま85歳です。一刻も早く無罪判決を勝ちとれるよう力を尽くしていきます。来月開催するアヤ子さん支援の彩画展にもご協力ください。
 なお、『叫び 冤罪・大崎事件の真実』(かもがわ出版・入江秀子著)は大崎事件と裁判をめぐる状況をリアルに描いていますので、多くの方々に読んでもらいたいと思っています。

―――大崎事件をめぐる問題点と司法改革へのご意見がよくわかりました。本日はありがとうございました。