泣き寝入りせずに裁判でたたかう  
2011年4月25日
山崎正則さん(「米兵による女性強盗殺人犯罪を糾弾する裁判」原告)

―――2006年、山崎さんの奥様は酔っ払った米兵にお金を強奪され、暴行の末殺害されました。米兵は刑事裁判で無期懲役が確定し、その後山崎さんは米兵に対して損害賠償を求めるとともに、国の責任も追及する裁判を提起されました。山崎さんが裁判を提起するに至った経緯と思いからお聞かせください。
(山崎さん)
  殺された私の妻も、そして私も、もともと米軍は日本の安全のための役割を果たしていると思っていました。妻はその米兵によって殺されたんです。かわいそうですし、悔しいです。なんとかかたきをとりたいと裁判をはじめました。
  実は事件の後、防衛施設局の人が補償のことで訪ねてきました。補償といっても、私には初めてのことでよくわからず、知人に相談したんです。知人は弁護士さんと一緒に来てくれました。そして裁判をすることにしたんです。

―――裁判をするにはその費用のことなども気になったのではないでしょうか。米兵の犯罪に泣き寝入りを余儀なくされる方も多いと聞きますが、山崎さんの場合はどうだったのでしょうか。
(山崎さん)
  私には裁判をする費用はなかったんですが、弁護士さんがお金のことは気にするなと言ってくださいました。それで、私は何年かかっても裁判をたたかうことにしたんです。
  裁判をするには、それをサポートしてくれる人も必要です。会社や周りから「やめとけ」と言われたり、「(裁判をするのは)金が欲しいんだろう」などと言われることもあります。どうしても周りの目を気にして裁判を躊躇してしまう人が多いようです。米軍から仕事を受注している会社から圧力を受けた人もいるようです。
  米兵の犯罪に多くの人たちが泣き寝入りしているのは、マスコミや政府にも問題があると感じます。米兵の犯罪を糾弾するような報道が大々的に展開されることはあまりありません。
  私の場合は、妻を殺され、もはや失うものはなくなり、徹底的にやってやるという心境になりました。

―――裁判の第一審は、米兵に対する高額の賠償請求を認め、国にも米軍の監督責任があるとしましたが、この事件における国の責任は認めませんでした。この判決を山崎さんはどのように受け止めましたか。
(山崎さん)
  一審の裁判長はこの事件における国の責任も認めたい気持ちがあったようでしたが、結局は認めませんでした。私は、裁判所も政府に引きずられているように感じます。つまり、日本政府はあまりアメリカに物を言いません。それが司法にも反映しているような印象を持っています。なんとか二審では国の責任も認めさせたいと思います。

―――山崎さんはこの裁判を通じて、いろいろな弁護士や裁判官と接することになりました。はじめて法律家と接したとのことですが、弁護士や裁判官にどのような印象をお持ちになられましたか。
(山崎さん)
  弁護士さんは別の世界の人のように思っていましたが、私をサポートしてくれている弁護士さんはみな、ある意味私たち市民と同じで、普通の人です。本当にざっくばらんに議論し合える関係です。
  一審と当初の二審の裁判長は、原告の話にも耳を傾けてくれる感じでしたが、二審の裁判長は別の人に替わってしましました。今度の裁判長はつっけんどんな感じです。裁判に時間をかけること、弁論時間を30分とるというのはサービス、と言った時には腹がたちました。

―――二審の審理も重要な局面を迎えているようですが、いまの思いをお聞かせください。
(山崎さん)
  米兵の犯罪については多くの人が泣き寝入りを余儀なくされていますので、私は裁判をやったこと自体も勝利だと思っています。米兵と米軍、そして政府がしていることを少しでも市民に知らせることができるからです。
  日本人同士の事件ならば普通に裁判が行われます。当たり前のことです。米兵の責任だって普通に追及されるべきです。国が米兵を連れてきたのですから、国に責任があるのは当たり前です。
  私はアメリカ人が憎いわけではありません。しかし、米軍が、米兵は日本人の「よき隣人」で「優しい」というキャンペーンをはる一方で、日本人が米兵から危害を受けるようなことは決して許せません。

―――こんにちの裁判所と司法をめぐる現状の一端をお聞かせいただきましたが、それは本当に求められる司法への問題提起だと思います。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

<編集部から>
* 山崎さんの裁判の次の期日は5月12日です。詳しくはこちら
* 「山崎さんの裁判闘争を支援する会」のホームページはこちら